LEDの実力を試す

Corona

最近妻を撮るシリーズばかりだったので、たまには暗室の話でも少々。
マニアックな話なのでマニアックな人だけに読んでいただければと思う。

また、知識が足りてなかったり間違っている部分はご指摘いただけると助かります。
今回は、LEDの実力を試す話。

暗室で写真を焼くとき、
・引き伸ばし機にネガをセットして
・露光量を決めて
・イーゼルに印画紙をセットし
・露光する
という作業になるわけであるが、
「露光する」という部分で、当然だが光源が必要となる。
一般的にこの光源には電球が使われている。
一部、コールドライトという仕組みもあったようだが…(詳しく知らない)
今回は、その光源をLED電球に変えてみよう!という実験である。

【結論】
えらい長文になってしまうので結論だけを先に言うと
「変化はあるが、個人的には影響は微小と判断し、問題とならないため採用」
ということにした。但し、まだしばらく様子見である。

windowlight

なぜ、LED化するのか?

電球で何か不便があるのか、と言われれば、個人的には何も不具合はない。
普通に焼けてるし、出来上がりの写真に不満があるわけでもない。

唯一、「切れちゃった」という事態が起きると、一切の暗室作業が不能になるので
弱点っちゃ弱点だけれど…予備の電球を持っておけばいいだけの話。
電球の弱点は、熱である。

長時間露光をするような焼き方をする人にとっては、この熱が厄介になる。
長時間露光(或いは、準備段階で長時間ランプをつけたままにする)をすると
熱でネガが傷んでしまうのである。
前述したコールドライトという仕組みは、光源に電球ではなく
蛍光灯を用いたもの、と認識している。

但し、電気を通せば即座に全開(LEDのように0→1ではないが)になる電球に対し
蛍光灯は安定するまで時間がかかるということで、専用の制御装置が必要なようである。

しかし、蛍光灯は電球に比べ熱の発生が少ないため、ネガの痛みは少なくて済む。
LED化は、簡単に同様の効果を得られるというメリットがあると考えた。
特に長時間露光をするわけではないのだけれど…まぁ、理系脳の興味というかなんというか。

こもれび

LED化の問題点

しかし1点問題がある。
LEDは波長分布が電球とは異なるのである。
もう少し簡単に言うと、同じ白色の光が出ているように見えても
その光を分解すると、電球がまんべんない色の光に分解されるのに対し
LEDは特に青色の光が多くなっている(これがブルーライトというやつである)
※詳しく知りたい方は「LED スペクトル」とかでぐぐってみてください
別に同じ白い光だからいいじゃーん・・・と、言うわけにはいかない。

近年主に使われている多階調印画紙というものがその問題を引き起こす。
多階調印画紙というのは、その名の通り1枚の印画紙で様々な階調表現ができる印画紙である。
(昔は号数紙といって、硬調な紙、軟調な紙といったように紙ごとに階調がきまっていた)

多階調フィルターを用いることで、この階調をコントロールすることができるので
1枚の紙で、「これは硬調目に」「次は軟調に」といったことができるようになる。
では、どうやって階調をコントロールしているのか?

仕掛けはそのフィルターにある。
フィルターを見たことがない方は、「多階調フィルター」でぐぐってみてください。
多階調フィルターは5号(硬調)をピンク、0号(軟調)を黄色として
段階的に変化する色フィルターである。

一方、多階調印画紙には、ピンク色に反応する硬調な感光剤や、黄色に反応する軟調な感光剤、
といったように、ある色の光だけに反応する感光剤が塗ってある。

そして、フィルターを通した光が印画紙に当たると、その色に反応する感光剤が反応し
写真となって浮き出てくるわけである。そうすることで、階調をコントロールしているわけである。

←→

そのどこが問題なのか?

勘のいいひとなら、ピンときた人もいるかもしれない。
今お話してきた中の、何が問題なのか?そもそもLEDの話をしてたのになぜ紙の話になっているのか?

答えは「ある色の光に反応する感光剤」という部分である。
フィルターを通すことで、光の色を変化させることで、階調をコントロールしていることは先述の通り。
しかし、フィルターは「光を吸収」することはできても「光を増幅」することはできない。

つまり、たとえば電球から出た光の光量を90としたとき、
黄色いフィルターを通すとフィルターが黄色以外の色を吸収してしまうので
フィルターを通した光の光量は90ではなく、30とか40になってしまうわけだ。
その分、露光時間が増えることになる。

もったいぶっているわけではないのだが、まだ問題の根本には到達してないので
興味がある方はもう少しお付き合いいただければと思う。
(たぶん、興味がない人は既に閉じてしまっているであろうけれど…)

veil

ココが問題!

先の例えだと、光源から出た光を90として、黄色のフィルターをかけた。
ここで改めて、光源から出た光を90として、青い光が30、赤が30、緑が30であったとする。

■ケース1:赤いフィルターを通した場合
赤いフィルターを通すので、青と緑が吸収されて、赤い光30だけが残る
■ケース2:青いフィルターを通した場合
青いフィルターを通すので、赤と緑が吸収されて、青い光30だけが残る
緑フィルターのときどうなるかは、おわかりいただけるだろう。
このように、異なる色の光量が同じであれば、大きく影響はしない。
では、電球はどうなっているのか?

「電球 スペクトル」でぐぐってみていただきたい
そうすると、青(紫)側が少なく、赤に近づくに従って大きくなっていることがわかる
(だから電球光は少し赤っぽいのである)
先の例えに当てはめてみると、総量90に対して青が10、緑が30、赤が60といった具合だろうか。

こうなると、赤フィルターを付けた時と青フィルターを付けたときで、光の量が変わってしまう。
しかし、一般的な多階調フィルターはこれを考慮し、光量が一定となるように設定されている。
(4号5号のみ露光量が倍になるのは、このへんが関係している…と、思う)
一方、LEDの分布はどうなっているのか?

先にも述べたとおり、青が強く、その後谷があってもう一山、という分布になっている。
最初、「青がこんなに強いからどう焼いても硬調になっちゃう?」と思ったのだが
そこはフィルターを使って吸収してしまえばいいので問題がない、はずである。
とすると、何が問題か?

間違いなく言えるのは、電球とLEDでは波長の分布が異なっている。
また例の例えを使うとすると、総量90に対して青が50、緑が30、赤が20くらいだろうか。
そうすると、電球に最適化されたフィルターでは、フィルターを通した後の光量が変化してしまう。

つまり、使用するフィルターによって露光量がばらつくことになるわけである
(電球ではフィルターを2号→3号に変えても露光時間は変わらないが
LEDの場合だと露光時間が変わる可能性があるということだ)
だとすると、やたらめんどくさいことになってしまう。
と、いうわけで実験をしてみることにしたわけである。

Labo.

実験してみた

実験と言っても大層なものではなく、
電球とLED、それぞれ0号~5号まで焼いてみて違いを見てみただけである。
尚、電球とLEDでは若干露光時間も異なるため、
2号フィルターを付けた時にだいたい同じになるように調整した
使用したLEDはPanasonicの広配向型100型相当の電球色タイプである。
なんとなく、昼白色では青色のパワーが強そうだったので、
電球に近い気がする電球色にしてみた。

cm

実験の結果

私の環境では、全体的に半段ほどコントラストが落ちたようなイメージであった。
心配していた露光量については(厳密には違うのかもしれないが)気になるほどのものではなかった。

露光時間もさほど伸びることはなく(10~20%くらい)実用範囲と判断できたため、
しばらくLEDにして使ってみようと思う。
ちなみに、LEDでは熱を持たないので、撮影用レンズを引き伸ばしレンズに使っても
問題ない、なんて話も聞いたのだけれど、実際のところどうなのでしょうか…?
(電球は熱を持つためバルサム切れたりする影響があるけど、熱を持たないLEDなら普通に使える、とか?)

情報お持ちの方いらっしゃったらコメントでもメールでも、頂けると嬉しいです。
※実験結果には個人の主観が多分に含まれている為、この記事を見てLED化したことによる
損害については一切責任負えませんのであしからず。LED電球結構高いし…
※もし試してみようという方はTOSHIBAの電球は選ばないようにしましょう。
品質が悪いとか、そういうことではなく(日本メーカーですから品質は十分なはず)
電球の頭にフレーム(?)があるため、影になって引き伸ばしに使えません。

2件のコメント

  1. はじめまして、パソコンモニターのLEDサイド照光式、最初はAPPLEのノートパソコンの古いジャンクを解体して液晶パネルは外して(散光板とか偏光板は残して無反射ガラスを宛がってそれを4ツ切り携帯暗箱に付け、エイトバイテンネガを壁に照射して3号印画紙に半切に伸ばしてみました。只サイド照光冷陰極放電管が片側だけで暗くてバイテンから半切ですから√2ぐらいの拡大なのに照射45秒(しぼりf8?)ぐらいでピント合わせに苦労しました。
    そこで富士通の15吋モニタージャンクを1円で引き取り冷陰極蛍光灯の制御がパソコン指令制御なので、中国製カラーTV補修用LEDアレイ両サイド式を700円台で購入、21吋の用の長さですので長さを短くして両サイド照射式にして明るさは放熱を心配して暗めで使いました。
    最近はジャンクになったようなSINOXの57引き伸ばし機の出番がないので光源部を切り捨てて15㎏ほど軽量化してエイトバイテン対応にしました。まだ今月作業開始してやっとRCぺーパーの出番になったところです。古い印画紙がもう性能が出なくなったのでやっと新しくRCぺーパーを仕入れました。
    光源補正フィルタなしで2号と4号を使ってみましたが2号はまぁ適応かなぁ、4号は確かに硬調にはなっていますが3号かなぁと言ったところで暗室の先生から「冷陰極放電管なCC40Yを使うよ、けどLEDはまた波長が違うでしょ?」と言われてとりあえず薄いイエローのフィルターを買ったところです。
    と言ったところでやっと少し勉強しないといけないなぁと・・・
    WEBを開いたらこちらのサイトが一番に目について飛びついたという次第です。もう人生もいつ終焉を迎えてもいい歳なのですが認知症で施設に入った兄が2名いるので先に終わるのか?いや兄貴たちを見送りたいと、やはりボケ始めの症状かも知れませんね。
    Facebookはやっております。
    どうぞ勉強をさせてやってください。

  2. 貴ブログ記事を拝見した者です。

    私は代替写真(サイアノタイプ・ヴァンダイク)を一般に行われているようなデジタルネガ(OHPフィルムにインクジェットプリンタでネガを作成)による密着焼きではなく、モノクロのアナログネガフィルムを用い、引き伸ばし機で作成しております。銀塩プリントは有害な薬剤や完全暗室を要するなど家人に嫌われる要素が多く、ゆえに代替写真を行うわけです。

    光源は395nm辺りの可視光域に近いステージ照明用のUV LED(50W/所謂ブラックライト)で、アナログネガはアナログカメラおよびフィルムレコーダ(Polaroid Digital Palette HR 6000)で作成しております。

    露光時間はB5サイズで約5時間かかりますが、元々感光性が低い印画紙ゆえ完全暗室は不要(外光を遮断すれば暗めの室内灯下で終始露光可能)な上、タイマーで電源管理を行えば就寝中に作業は完了します。なにしろ、密着焼きと異なり印画紙面の状態を視認可能な点でメリットがあると感じております。用いる紙は275g/m2の画材店で一般的な水彩画用紙です。

    さて、世の中便利になったもので、3Dプリンタ用のモノクロLCD(バックライト無・コントローラボード付・2560x 1620ピクセル)が値頃に入手可能になり(Aliexpress)、Windows PCからネガ画像をLCDに出力すれば、LCD上のネガ像(デジタル画像)がアナログネガに代替可能であることが最近判明しました。

    つまり、引き伸ばし機のネガキャリアに、ネガの代わりにモノクロのLCDを差し込むということです。3Dプリンタ用のLCDは6インチが主流ですので、その大きさのLCDをネガキャリアに差し込むには 4×5迄プリント可能な大判の引き伸ばし機が必要となります。中古で大判の引き伸ばし機は入手できますが、大判の引き伸ばし機では一般的な散光形式では感光性の低い代替プリントでは印画紙面に必要な紫外線が届きません。そこで、15cm口径大のコンデンサレンズによる集光式に引き伸ばしきを改造する必要があります。
    LCDの紫外線透過性がアナログネガに比べて低い点で若干露光時間が延びる傾向がありますが、概ね、7時間程度です(サイアノタイプ・ヴァンダイク共々・B5印画紙の場合)。徐々に印画紙に顕像するので銀塩プリントのような慌ただしさがありません。気長に他の用事でもしながら、横目で印画紙の様子を見ているだけです。

    この解像度があれば余程大きく引き伸ばさない限りLCDのセルがプリントに目立つことはありません。
    いくつか作例をFlickrに掲載しております。ご高覧賜れば幸いです。

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