突然の別れ

Buell

引き金を引いたのは誰でもないこの私である。しかし、こうもトントン拍子に話が進んでしまうと心の準備ができないというもの、そんな突然の別れの話。

何の話かは冒頭の写真を見ていただければおわかりいただけるだろう。社会人になった直後くらいに友人から譲ってもらったオートバイ、Buell S2との別れの話である。実を言うとmonogramさんで個展を開催していた頃、準備や個展の開催でばたばたしているスキにうっかり車検を切らしてしまい、不動車となったまま放置してしまっていたのである、ほんとごめん。

その間に子供も生まれ、ますます乗らない(乗れない)状態になり、それならばいっそ手放して…と思ったのだけれど、不動車を引き取ってくれそうなところなんてのは○イク王くらいしか思い浮かばず、しかし一般的な車両ならまだしも取り扱いにいろいろ癖があるこのバイクを一般的なお店に引き取ってもらうのはいささか気が引ける、というかそもそも引き取ってくれるかも怪しいもので、二の足を踏んでいたというわけである。

そんなとき、偶然YoutubeでBuellの動画を見つけて見てしまい、「あ、乗りたいな」「動かないしな…」「レンタルないのかな」と探して見つけたお店が、個人経営でBuellを取り扱っており、しかもそんなに遠くない(所沢にある)お店だった。状態が状態なので買い取ってもらうなんておこがましいことは言わない、むしろお金を払ってもいいから価値の分かる人、整備できる人のところに行ってほしいという願いを込めて連絡をしたところ、現状の写真と大まかな走行距離を送っただけで「その状態なら無償で引き取ります、明日でも行きましょうか?」
なんてトントン拍子に話が進んでしまったというわけである。

Buell S2 
 

さて、折角の機会なのでこのオートバイについて少し語らせていただこうと思う。カメラ以外のこともちょっとは話題にできるのだというところを見せておかなければ。

Buellというメーカー、知る人ぞ知るといってもいいであろう、アメリカのマイナーメーカーである。アメリカのオートバイといえばこちらは誰もが知っているであろうハーレー・ダビッドソンというメーカーがある。実はこのBuellというメーカー、元ハーレーの社員であるエリック・ビューエル氏が独立して設立したメーカーなのである。

Buellのオートバイは大きく2世代に分けることができる。私が乗っていたS2も含む、ハーレーのエンジンを流用して鉄のフレームに搭載した通称EVO系と呼ばれるシリーズと、独自に開発エンジンを搭載し、アルミフレームを採用して極限までコンパクトにまとめたXB系と呼ばれるシリーズ、どちらも非常にユニークなオートバイであり、どこかで「XB系は走る冗談、EVO系は走る理不尽」なんて呼ばれているのを聞いたことがある。

Touring 
 

私の乗っていたS2は1995年製、私が乗り回していた頃ですら20年選手の旧車であったとはいえ、とにかくお金のかかる子だったことは記憶に残っている。ハーレーのエンジンを使っているということで振動が大きく、長距離走ればどこかが割れる、部品がもげる、なんてことは日常茶飯事。エンジンからオイルが滲むなんてのは異常のうちに入らない(ディーラーで「ぽたぽた垂れてなければOKっす」と言われた。まぁそんなもんだ)、2年くらいでエンジンマウントがもげるなどなど、とにかく自分の中でいろんな伝説が残っている。しかしそれでも乗っていたのは、エリック氏が求めた「乗って楽しい」を感じられるオートバイだったからだと思っている。

何が楽しいって、とにかくエンジンが楽しい。ハーレーのエンジンを想像いただければドコドコ言いながら走っているようなイメージはしていただけると思うが(爆音のイメージがある人もいるかもしれないが、あれはマフラーを交換しているからで純正ならそこまで爆音じゃない)まさにあの鼓動感が「エンジンが地面を蹴っている」という感覚を持つことができた。初めて乗ったときだけではなく、常に「鉄馬とはよくいったもんだなあ」と考えながら乗っていた。

また、私の乗車スキルは大したことないので、峠道なんかをゆらゆらと走るのもとても楽しい(上手な人にはパワーや剛性感といったところで物足りなく感じるのではないかと思う)車両自体は300kg近くある巨体なのだが、走り出せばそんなに重さは感じさせず、ひらひらと走ることができたのを記憶している(ただし、エンジンを止めたときには300kgがずっしりとくる、一度自走不能になったときは暗い道を一人で汗だくになりながら押して泣きそうになった)

そんな社会人の私をいろいろなところに連れて行ってくれた相棒と、突然の別れが訪れたということでここの記事として残しておこうと思う。私の家の駐輪場で眠っているよりも、誰かの愛車になるか、そうでなくても部品として誰かの愛車の一部になって活躍しているほうがきっとオートバイにとっても幸せなことだろう。

交換しようと思って買っていたのに結局交換しなかったスピードタコメーターを、一緒に過ごした証として大切にしようと思う。(クローゼットの奥にしまってあったのがスピードメーターだと思ってたらタコメーターだった)

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