先日TwitterでNOOKYの話が盛り上がっていたので、NOOKYについて書いてみることにする。ちなみにNOOKYは「ヌーキー」と読むことが多いが、ライカのアクセサリに付与されている(カメラとかにもついてるんだっけ?)5桁のアルファベットは特に読みがあるわけではなく、単なるアルファベットの羅列らしいので、どうがんばっても読めないものもある(SBKOOとか、スブコー?)
NOOKYとは
これをご覧になっている皆様には釈迦に説法だとは思うけれど、NOOKYとはバルナックライカに取り付けて使用する接写リングのことである。一眼レフに中間リングというアクセサリがあるが、役割的にはあれと同じで既存のレンズのフランジバックを延長することでもともとの最短撮影距離より近い距離で撮影ができる、というシロモノなのだ。
一眼レフの場合はファインダーで見えてるそのまんま写るので、中間リングはただのスペーサーである。しかしライカのような距離計連動カメラでは「距離計との連動」という問題が生じる。ただリングを噛ませてフランジバックを延長しただけでは、距離計が連動しなくなってしまうのだ。
そんな近距離で撮るならもうメジャーか何かを当てて距離を測ればええやん…としてしまえばいいところ、さすがはライカ、中間リングに距離計補正機能まで持たせてしまえ!なんならパララックス補正も付けちゃうぞ!という豪華3点盛りのアクセサリーなのだ。
NOOKYの種類
ライカの接写リングを総称して「NOOKY」と言われることが多いが、実はNOOKYはElmar 50mm f3.5用の接写リングのコードであり、他のものは違うコードが付いている。各コードと対応レンズは以下の通り
NOOKY : Elmar 50mm f3.5
NOOKY-HESUM : Hektor 50mm f2.5, Summar 50mm f2.0, Summitar 50mm f2.0
SOOKY : Summicron 50mm f2.0
SOMKY : Summicron 50mm f2.0
上の3つはLマウント、SOMKYだけはMマウント用である。また、NOOKY-HESUMも前記後期があり、前期型にはSummitarの記載がないそうだ。さらに、ボディ側がIIIb以前対応のものから、IIIc以降対応のものの2種類があるようで…もう何がなんだかわからない。NOOKYにも2タイプあるのか?SOOKYはどうなのか?詳しい人教えてください。
ちなみに、NOOKY-HESUMの前後期についてはここでアレモさんがかなり詳しく説明してくださっている。
自分の持っているNOOKY, NOOKY-HESUM, SOOKYの3種をIIIaに取り付けて比べてみたのだけれど、違いは感じられなかった。謎は深まるばかり。
NOOKYの機能①フランジバック延長
正確にはNOOKY、NOOKY-HESUM、SOOKYの3種だが、面倒なのでここではまとめてNOOKYと呼ぶことにする。
まずひとつ目の機能は、主機能である中間リングとしてフランジバックを延長する機能がある。よくある中間リングは両側にオスメスのマウントが付いていて、片側をカメラに、もう片側をレンズに装着することでフランジバックを延長しているが、NOOKYの場合は距離計連動機能をもたせた結果リング自体が分厚くなってしまったため、沈胴レンズを珍洞させて(レンズ側のヘリコイドは使わずに)装着する形を取っている。その関係で沈胴レンズにしか対応していない(唯一、SOMKYだけはアタッチメントを用いて固定鏡胴のズミクロンで使うことが可能。あれ?ってことはSOOKYも使えるのかな?)
NOOKYの機能②距離計連動
撮影距離を近距離にするにもかかわらず、距離計を連動させるための機能が付いている。そのために、距離計の補正レンズ(写真左側の丸窓)が設置されている。これにより2重像側の光路を補正することで距離計を近距離側に補正している。
勘のいい方は疑問に思われるかもしれない、スクリューマウントなのにこうもピッタリと距離系窓の前にレンズが来るのか?締め付け方でズレが生じてしまうのではないか?その疑問はその通りなのだが、ライツはファインダー関係のユニット(黒い部分)をフローティング構造とすることでどのように装着してもファインダーの位置にレンズが来るようにしている(言葉だと上手く言えない…動画でも載せればいいのかな?)。このように、何もかもを機械的に解決してしまうこの頃の工業製品が私は好きだ。
NOOKYの機能③パララックス補正
レンジファインダーカメラにおいて、撮影距離が近距離になるとパララックス(視差)が生じてしまうのは構造上やむを得ないことである。M型になると距離に合わせてブライトフレームが移動し、パララックスを補正してくれる機能が付いているが、バルナックライカにはそのような機能は付いていない。
しかし、NOOKYを付けた状態での撮影距離になるとパララックスも無視できない為、ライツはNOOKYにパララックス補正機能を付けた。その作動イメージが下の二枚の写真である
おわかりいただけるだろうか…?左が遠距離(最長距離)、右が近距離(最短距離)の状態である。画角確認用の四角いファインダーのところ、金色の部品に注目していただくと、近距離側では大きく出っ張っているのが見ていただけると思う。この部品によりファインダーの右上(ファインダーを覗いたときの左上)を隠し、パララックスを補正している(ここは写らないよーという範囲を隠している)のである。もちろん、どこまで信頼できるのかは…わからない。
個人的に驚いたのは、撮影距離に応じてこの部品を移動させる構造である。もちろん電気なんて使っていないから機械的に実現している。下の写真をご覧いただきたい。
おわかりいただけるだろうか…?左が遠距離、右が近距離なのであるが、近距離になるファインダー周りの黒い部品の下から金色の部品が覗いているのが見ていただけると思う。この部品がファインダーマスクの部分と一体となっており、ピント調整により回転する部分に接することで位置を調整しているのである。つまり、パララックス補正の部品が接触する部分だけ偏心形状になっているというわけである。どうやって作ったんだライツさん。
といっても、これも言葉で言うのが非常に難しい。わかる人だけわかっていただければ良い内容なのでわからない人は読み飛ばしてほしい(これも動画を載せれば解決するのか?)
NOOKYで撮れる写真
さて、そんな大層な機能を有したアクセサリを装着して撮影をしたらどんな写真が撮れるのか。NOOKYを使用して撮った写真を見ていただきたい。
テーブルフォトが撮れる!ちなみにこれも最短ではないため、もう少し寄ることもできる。いかがだろうか?
普段、一眼レフを使用している方がこの記事をここまで読んでくださっていたとすると(本当にこんな話にお付き合いいただきありがとうございます)接写?どこが?と思われるだろう。そう、NOOKYを使用して撮影できる範囲は1m〜0.45mくらいなのである。しかも装着すると1mより遠くにはピントが合わない。パララックス補正の話をしていたときに出てきていた「遠距離側」とは撮影距離1mの状態ということである。
最短で45cm程度といえば、一眼レフならば標準レンズの撮影範囲内である。レンジファインダーゆえにこんな大層なものを付けても一眼レフの標準的な撮影距離にやっと届く(一眼レフのレンズの中にはもっと寄れるものもあるだろう)程度なのである。
しかし、普段ライカを常用している人はきっと口をそろえてこういうのである。
NOOKYすごい!めっちゃ寄れる!