「これ、Lマウントの8枚玉なんです」
数年前、熊本にいた頃に友達のライカ男子にそう言われた。
「へーそうなんですね!」
答えたものの、当時ライカに興味を持っていなかった私は
それがいかなるものなのか、よく理解していなかった。
Lマウントであることの希少性はおろか
8枚玉が何を意味するかも、わかっていなかった。
ライカには伝説化しているレンズがいくつかある
「8枚玉」と呼ばれるレンズもその1つである
細かい話はあちこちで語られているので
ここで中途半端なことを語ることは避けておくけれど
同じ35mmのズミクロンの中においても、
なぜだか中古価格が飛び抜けて高騰しているのである
そんなレンズが、中古相場に対してかなり低い値付けで
お店に並んでいるのを見つけてしまったのだ
「メガネ付き」と呼ばれ、不人気で相場も安いものだったが
それを加味しても、二度とは出会えないであろうものだった
とはいえ安いには安いなりの理由があるのだろう、と考え
状態をチェックしてみたけれど、悪いところは見当たらない。
レンズとメガネに傷はなく、やや曇りは見られるものの、酷くはない。
ヘリコイドや絞りリングの動作も非常に良好である。
合わなければ、手放せば良い。
合わなかった、という事実が残れば悔いはない、と思い決断をした
手に入れた直後、熊本へ飛ぶことがあったので
意を決して、このレンズ1本でいくことに決めた。
ボディ1台にレンズ1本
中判のボディ+レンズ数本を鞄に入れて歩き回っていた頃から考えると
驚くほどに荷物が軽くなっている
約1年ぶりの熊本ということで、たくさん撮った
河原町も撮った。益城町も撮った。友達も撮った。
帰ってきて現像、データ化祭りである。
正直、最初はあまり良さを感じなかった
こんなもんか、やはり伝説は伝説なのか
悪くはない、というか当然良いのだけれど
そこまで神格化されるほどの良さがあるか、と言われると
疑問を感じないと言えば嘘であった
しかし、撮影したネガが進むに連れて、少しずつ見え方が変わってきた
撮り方に慣れたのか、レンズが馴染んだのか(そんなわけないか)
或いは前半は露光が微妙だったのか…(この説が最も有力)
古いレンズだけに、開放はフワフワである
まるで球面ズミルックスの35mmのように、しかしそれほどきつくはない
但し、f2同士で比べれば、ズミルックスの方が描写性能は上である
絞ればフワフワも落ち着き、しっかり描写してくれる。
しかしコントラストは上がらず、トーンは豊かである。
シャープネスも十分、モノの質感も非常によく表現されている。
お店の人は「描写はまぁまぁ普通ですよ…」と言っていたけれど
きっと、カラーでしか試写していなかったのだろう
質感表現やトーンなどは、モノクロで撮って初めて見えてくるものである
(いやわかる人にはカラーで撮ってもわかるのかもしれないが)
さらに言うと、まだ暗室でプリントすらしていないので
最終判断をするには時期尚早であるのだが
とはいえ第1印象からうってかわって気に入ってしまったわけだが
さすがにちょっとレンズが増えすぎているので、整理する必要がある
悩める日々は終わらない…