リアルタイムEOS | EOS RT

you can fly

私はライカを使い始めてからまだ6年ほどしか経っていない。しかし、一度レンジファインダーカメラに慣れてしまうと、久しぶりに一眼レフを使ったときに妙な違和感を感じてしまうのである。そう、撮影時のブラックアウトである。

もちろん、一眼レフのいいところはたくさんある。パララックスは皆無だし、ボケの具合も確認することができる。少し絞り込んでいけるかなーと思ったら後列がボケボケの集合写真を撮ってしまった、なんてことも一眼レフなら起こらないだろう。

しかし、一度ブラックアウトの無いレンジファインダーカメラを使ってしまうと、それまで気にしたこともなかったようなこのブラックアウトが異様に気になってしまうのである。撮影の瞬間ブラックアウトしていると、ポートレイトなんかを撮っていても目をつむったことに気づけなかったり、名作スナップが撮れた!と思ったら目の前を車が通り過ぎていたりなんてことがある(後者はあんまりないか)

natura classica 愛好家

そんな一眼レフの弱点を克服しようとした猛者がいる。タイトルの通り、EOSを生み出したCanonである。マニュアル一眼レフの時代に、「ミラーが動いてブラックアウトしてしまうのなら、ミラーを動かさなければいいじゃない」なんていう発想で生み出したのがPELLIXというカメラである。仕組みは文字にすると単純で、本来一眼レフのミラーがある場所にハーフミラー(ペリクルミラーと呼ばれる)を設置し、入ってきた光の約3分の1をファインダーに、残りをフイルム面に透過することで、ミラーの動作そのものを無くしてしまったのである。

※ここではブラックアウトのことを述べたが、一眼レフはシャッターを切ったときにミラーアップをしてからシャッターを切るという動作が必要になるため、レリーズボタンを押してから実際にシャッターが切れるまでの時間(シャッターラグ)が長くなってしまうという弱点もある。Canonがどの問題を解決しようとしてペリクルミラーを開発したのかは…今のところ調べきれていませんごめんなさい

その後、カメラの中心はAF一眼レフになり、Canonもそれまでのマウントを捨ててEOSというカメラを生み出した。そのEOSにこのペリクルミラーの技術を採用したのが今回の話題にするEOS RTというわけである(前置きが長い)ちなみにこのペリクルミラーは、RTの後にEOS-1n RSとしてEOSのフラッグシップに採用され、現在のところその歴史は途絶えている。なんだかんだ光量が3分の2になっちゃうとか、ファインダーが暗いとか、いろいろ問題はあって一眼レフを淘汰するほどのものにはならなかったのだろう…

とは言うものの、ミラーアップが無いということはレンジファインダーになれた私にも違和感なく使えるのではないか?ということで入手してみた。実はこのEOS RT、ペリクルミラー部以外はEOS 620や630、650と共通部品となっており、なんとクオーツデータバックEという裏蓋が装着できるのである。そしてこの裏蓋、なんと2029年まで日付が入れられるというシロモノなのだ。それもあって、今回このRTに手を出したというわけである(データバックEについてはまた別の機会に語りたいと思う)

あじさい 
 

そんなわけでRTを手に入れてしまったわけだが、実はクオーツデータバックを手に入れるために620も手に入れてしまったため、それと比較しながら特徴を確認してみた。

RTはペリクルミラーを採用しているが、残念ながらAFセンサーに光を導く必要があるため、実はペリクルミラーの後ろに小さなサブミラーが鎮座している。したがって、Aモード(通常のモード)ではシャッターボタンを押すとサブミラーが作動して光路から逃げてシャッターが開くという動作になるため、実はあまり大きくシャッターラグは変わらない。しかし通常のミラーと違うのは、AF測距が終わってしまえばサブミラーは不要となるため、RTモードという極限までシャッターラグを短くしたモードでは、シャッター半押しでピントが合うと同時にサブミラーが動き、さらにレンズの絞り込みが行われ、あとはシャッター作動を待つだけという状態になる。このモードでは、驚異のシャッターラグ8msec(0.008秒)を実現しているというわけである。(一眼レフ最速と言われるNikon F2でも28msecなのでその3倍以上速いわけである)実際このモードでシャッターを切ると、ライカM3で切ったときと同じ感覚でシャッターが切れているような感覚になる。勿論ミラー駆動も無いため手ブレに対しても強いと考えられる。

シャッター音についても、Aモードでもサブミラーの作動音はするものの、ミラーそのものの大きさが小さいためか駆動音は小さく、可愛らしい音である。RTモードにするとAF測距後にサブミラーを逃がすため、その時に少し駆動音がするが、実際にシャッターを切るときにはライカと同じ、とまでは言えないかもしれないがそれに匹敵する程度の音量だと感じられる。ポートレイトなんか撮る場合にはRTモードだとサブミラーの駆動音がシャッター音と勘違いされてしまいそうなので、Aモードを使うほうが良いかもしれない。

ある公園 
 

さて、ここまでライカを使ってる私にとっても違和感なく使える、みたいなことを述べてきたが、当然一眼レフであるわけなので完璧にレンジファインダー同様というわけにもいかない。まず、ペリクルミラーによって3分の1の光のみがファインダーに導かれるため、620と比べるとすこぶるファインダーが暗い。さらに、一眼レフは当然撮影レンズから入った光をファインダーで見ているため、屋外で撮影をしていると撮影の際に絞り込みが行われるため、ブラックアウトはしないがレリーズの瞬間ファインダーが絞りに応じて暗くなる(RTモードの場合測距終了時にファインダーが暗くなる)これはライカにはない現象であるから、やっぱり違和感はある。

完全にレンジファインダー同等とは行かないけれど、パララックスがなく、ピントやボケも確認できて、AFも使えるということでちょっと使い込んでみようと考えている。少し落ち着いて人と出かけられるようになったらポートレイト的な写真を撮るのにも使ってみたいなあと思うし、まずはスナップで様子を見てみようと思うのでまた後日その結果をご紹介できればと思う。

本日はこんなところで。

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